BtoB-EC(企業間取引の電子商取引)市場は、急速な変化と拡大を遂げ、その市場規模はますます増大しています。業界の参加者や関係者、特に業務のEC化にまだ手をつけていない企業の経営者や販売管理者は、BtoB-EC市場の発展とその背景に興味があるのではないでしょうか。この記事では、BtoB-EC市場の急拡大に影響を与えている真の理由と、その市場が成長する中で浮かび上がる興味深い背景について、詳細に解説していきます。
BtoB-ECの市場規模はBtoCを大きく上回る
BtoB-EC市場がBtoC-EC市場を上回っている事実をご存じでしょうか。令和4年度の電子商取引に関する経済産業省が2023年8月に発表した報告書によれば、日本国内のBtoB-EC市場は前年比12.8%増の420 兆 2,354 億円に達しています。これは商取引市場全体の3割以上を占め、EC市場の割合である「EC化率」も前年から1.9ポイント増の37.5%に達しています。
一方で、BtoC-EC市場は22 兆 7,449 億円であり、EC化率は9.13%です。通常、楽天市場やAmazonなどの一般消費者向けの大手インターネットショップがECの代表とされがちですが、実際には法人が法人向けに提供するBtoB-EC市場が圧倒的な大きさを誇り、その市場規模は個人向けECの18倍にも達しています。
市場規模が急拡大する4つの背景
BtoB-EC市場が急成長している理由は多岐にわたりますが、その中でも以下に挙げる4つの背景が特に注目されています。
1. アナログ業務にEC化の余地
BtoB-EC市場の急成長には、長らくアナログで行われてきた業務プロセスにデジタル技術が取り込まれていることが影響していると考えられます。昭和時代から続く電話やFAX、企業への訪問といった従来の手法は、近年になってようやくその限界を迎えました。受発注業務や請求書発行業務など、EC化により効率化が可能な業務が多く、これらの業務のデジタル化が進むにつれ、BtoB-EC市場も拡大しています。また、この変化は急激なものではなく、数年にわたり一貫して進展してきたものと言えます。これは、日本企業が周囲の動向を見極め、好調なら追随する姿勢が影響していると考えられます。
2. 働き方改革による後押し
2019年に施行された「働き方改革」もBtoB-EC市場の拡大を牽引しています。この改革の中で重要視されたのが「長時間労働の是正」です。厚生労働省は、生産性向上と働く環境の改善を企業に求めており、生産年齢人口の減少や働く方の多様なニーズに対応する必要があります。生産年齢人口の減少にもかかわらず、業務の正常な運営を維持するためには、無駄な手間のかかる業務を見直し、効率的に改善する必要があります。電話やFAXでのやりとりが多かった受発注業務や多数の書類に悩まされていた請求書発行業務、そして入金確認など、これらの業務は人間の手間が多くかかっていました。そのため、これらの業務のデジタル化により、EC化の効果が出やすかったといえるでしょう。
3. ITインフラの整備とデバイスの普及
BtoB-EC市場の拡大には、ITインフラの整備とデバイスの普及も大きく寄与しています。インターネット環境は都市部だけでなく、全国的に広がり、大企業から中小企業まで、誰でも簡単にインターネットを利用できるようになりました。また、マルチデバイス化により、パソコンが使えない場合でもスマートフォンなどを活用し、より多くの人がシステムに接続し、業務を行えるようになりました。これらの環境整備もBtoB-EC市場拡大に影響しています。
4. 日本特有の商習慣に対応
BtoB取引において、同じ商品でも取引先によって価格が異なるという日本特有の商習慣にもBtoB-EC市場は柔軟に対応しています。また、すべての商品を一律に見せるのではなく、取引先の信用度に応じて商品を提示するといった、BtoCとは異なる商習慣にも対応する必要があります。そのため、ECシステムには高い柔軟性と自由度が求められ、これに応じて独自のシステムが開発され、BtoB-ECアプリやシステムが進化しました。これが中小企業でも導入しやすくなり、市場規模の拡大に寄与したと言えます。
波に乗り遅れた企業には大きなデメリットが!
BtoB-EC市場の急拡大が進む中で、波に乗り遅れる企業は大きなデメリットを被る可能性があります。なぜなら、EC化が進まないままでは非効率な業務フローが続き、競合他社との比較で取引先からの不満が生じるかもしれません。取引先企業が手間のかかる取引に不満を抱く場合、他社に取引を移す可能性が高まります。また、社内でも問題が生じます。例えば、手作業が多くかかる業務が原因で長時間労働が続くと、社員が疲弊し、優秀な社員が他社に移動する可能性があります。これにより、業務の非効率化が悪循環を生む可能性があります。
インターネットにおける取引は、移動できる範囲だけではなく、業種によっては日本全国、世界にまで商圏が広がります。そのため、取引対象の数も桁違いに多くなり、売上の拡大も期待できるでしょう。EC化が進まないことで、大きな利益を逃してしまう可能性も考えられます。ウィズコロナ、アフターコロナの時代を経て、営業手法も変化しており、直接企業訪問する機会が減少しているため、EC化による顧客データの有効活用が求められています。
BtoB-ECの導入を成功させるには
ただし、BtoB-ECを導入しただけでは成功が保証されるわけではありません。競合サイトの研究やユーザビリティの向上など、自社都合の販促にとらわれない研究・改善が常に必要です。特にBtoBでは取引が継続的であるため、信頼性の高いサイト戦略が求められます。他社のサイトと動線が異なる場合、ユーザーが違和感を感じて離脱してしまう可能性も考えられます。また、BtoBでは既存顧客との取引もECサイトへ誘導し、効率化を進める必要があります。
まとめ
BtoB-ECの市場規模は今後も拡大し続けることが予測されます。つまり、EC化の導入は企業にとって死活問題といっても過言ではありません。今後のビジネス戦略において、EC化を検討し、急速に進化するIT時代に合わせて使いやすいシステムを利用し、市場に参入することが重要です。EC化によって得られる利益や競争優位性を逃さないよう、積極的な姿勢で取り組んでいくことが求められます。
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